ボトックス
歯科ボトックス治療とは

ボトックス(正式名:ボツリヌストキシン製剤)を顔面や口周りの筋肉に注射し、筋肉の過剰な動きを抑制する治療です。
ボトックス治療の効果
1.歯ぎしり・食いしばりの改善(咬筋ボトックス)
強い咬筋にボトックスを注射し、筋肉の過剰な緊張を和らげることができます。
- 就寝中の歯ぎしり・食いしばりが軽減
- 顎関節症の負担軽減
- 詰め物や被せ物の破損リスク低下
- エラの張り(角ばったフェイスライン)が目立ちにくくなる
2.ガミースマイルの改善
笑った時に歯ぐきが大きく見える「ガミースマイル」の人に対し、上唇を持ち上げる筋肉(上唇挙筋など)にボトックス注射することで、笑顔のときの唇の動きを穏やかにして、歯ぐきの露出を軽減することができます。
3.顎関節症の補助治療
咬筋や側頭筋に過剰な力がかかっている場合に筋肉の緊張を弱めることで、関節の負担や痛みを軽減することができます。
ボトックス治療の仕組み

ボツリヌス菌が作る毒素(ボツリヌストキシン)は、筋肉を動かす神経からの信号(アセチルコリン)の放出をブロックします。その結果、筋肉が一時的に動かなくなり、力が入りにくくなったり、リラックスした状態になるのが特徴です。
この作用を利用して、歯ぎしりや食いしばり、エラ張りなどの治療に使われます。
過剰な筋肉の動きを抑える効果
- 歯ぎしり・食いしばりの力が弱まり、顎や歯へのダメージを減らせる
- 筋肉の張りが取れ、エラがほっそり見えるようになる
- 笑ったときに上唇が上がりすぎる(ガミースマイル)を自然に抑える
つまり、過剰に働きすぎている筋肉だけを一時的に「休ませる」ことで、機能や見た目を整えるのがボツリヌス治療のポイントです。効果は通常3〜6か月ほど続きます。
ボトックス治療のメリット
1.歯ぎしり・食いしばりの軽減
- 咬筋の力を緩めることで、夜間の歯ぎしりや日中の食いしばりを抑えられる
- 顎の疲れや痛み、詰め物・被せ物の破損を防げる
2.顎関節症の負担を軽減
- 筋肉の過緊張が和らぎ、顎の開閉時の痛みや違和感が改善されることがある
- ナイトガードだけでは改善しにくいケースに有効
3.エラの張り(角ばった顔)の改善
- 咬筋のボリュームが落ちて、フェイスラインがスッキリ見える
- 美容的な効果も期待できる
4.ガミースマイルの改善
- 笑ったときに上唇が上がりすぎるのを抑え、歯ぐきの露出を減らせる
- 手術なしでナチュラルに見た目を整えられる
5.短時間・低負担の治療
- 注射だけで済むため、治療は数分〜10分程度
- ダウンタイムがほとんどなく、日常生活にすぐ戻れる
- 効果は一時的なので、試してみやすい(3〜6か月で元に戻る)
推奨される施術頻度
- 4〜6か月ごとの再注射が一般的な目安です。
- 初回よりも継続的に受けることで効果の持続が安定しやすくなります。
- 症状の再発状況や生活スタイルに応じて、医師と相談しながらペースを決めていくことが大切です。
ボトックス治療の流れ

- 初診カウンセリング・診断(咬筋の張りや食いしばりの強さを確認)
- 注射部位のマーキング
- 注射(片側数か所、10分程度で終了)
- 経過観察(腫れ・内出血の可能性あり)
アフターケアのポイント
- 注射部位を揉んだり押したりしない
- 当日の激しい運動・入浴・サウナは避ける
- 飲酒は24時間控える
- 再注射のタイミングは医師の指示に従う
※特に麻酔は不要で、そのままご帰宅・日常生活を送ることができます。
治療の安全性と注意点
ボトックス治療は比較的安全性が高いとされていますが、副作用やリスクがゼロではありません。以下に、歯科領域(特に咬筋や口周り)でのボトックス注射に関する主なリスクを簡潔にまとめます。
- 妊娠中・授乳中の方
- 神経筋疾患(例:重症筋無力症)のある方
- 過去にボツリヌストキシン製剤でアレルギー反応を起こした方
定期的なメンテナンスの必要性
ボトックス治療は一時的に筋肉の働きを弱める作用があるため、効果は永続的ではなく、通常3〜6か月ほどで徐々に元に戻ります。そのため、効果を持続させたい場合には定期的な再注射(メンテナンス)が必要です。
とくに咬筋へのボトックス治療では、繰り返し施術を受けることで筋肉の緊張が安定し、食いしばりや歯ぎしりの再発を予防しやすくなります。また、初回よりも2回目・3回目の方が効果の出方や持続時間が安定する傾向があるため、ボトックスを治療として継続する場合は、医師の指示に従って定期的なメンテナンスを行うことが推奨されます。
まとめ
- 効果の持続期間は 約3〜6か月
- 4〜6か月ごとの再注射が一般的な目安
- 初回よりも継続的に受けることで効果の持続が安定しやすくなる
- 症状の再発状況や生活スタイルに応じて、医師と相談しながらペースを決めていくことが大切
よくある質問
- Q. ボトックス治療の施術時間はどのくらいですか?
-
問診と注射部位のマーキングを含めても15〜30分で終了します。処置後すぐにメイクや帰宅が可能で、通院当日に仕事へ戻る方も多い手軽さが特徴です。
- Q. どんな症状に使われますか?
-
顎や唇の筋肉を一時的にリラックスさせることで、食いしばり・歯ぎしりによる咬筋肥大や顎関節症の痛み、笑ったときに歯ぐきが大きく見えるガミースマイルの改善などに用いられます。
- Q. 注射をする際、痛みはありますか?
-
氷で皮膚を十分に冷却し、極細針でごく浅く薬液を注入するため「チクッ」と感じる程度です。処置時間が短く、刺入回数も最小限に抑えるので多くの方が想像より楽だったと話されます。
ガミースマイルの改善の際のボトックス注射は、痛みを感じることがございます。 - Q. どのくらいで効果が現れますか?
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早い方は1週間前後で筋肉の張りが和らぎ、1ヶ月前後で噛みしめが軽減します。ガミースマイルは笑顔のときの上唇の上がり方が徐々に穏やかになり、2週間前後で写真写りに変化が現れることが多いです。
- Q. 副作用はある?
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注射部位の軽い腫れ・内出血・違和感が1〜3日続くことがありますが、コンシーラーで隠せる程度です。まれに表情が硬いと感じる場合も、薬効が落ち着くと自然に回復します。
- Q. 効果はどのくらい持ちますか? どれくらいの頻度で行うべきですか?
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薬効は個人差があるものの3〜6か月で徐々に薄れます。症状が再発する前に4〜6か月おきの再注射をおすすめします。
- Q. ボトックス治療で中毒になることはありますか?
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医療用は無毒化した極低量のボツリヌス毒素を使用するため、中毒症状を起こすリスクは極めて低いとされています。正規製剤を適切に希釈・投与すれば全身に影響が及ぶ心配はほとんどありません。
- Q. ボトックス治療ができないケースはありますか?
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以下に該当する方は安全性の観点から治療を見合わせます。
- 妊娠中・授乳中
- 重症筋無力症などの神経筋疾患
- 過去にボツリヌス製剤でアレルギー反応を経験
そのほか心配な持病や常用薬がある場合は、事前に必ず担当医へお知らせください。